Statement

調和社会に埋もれた「生きる力」の探究

私が暮らす日本は、調和と協力を重視する国です。近年はインターネットの普及によるグローバル化が進み、諸外国の影響を受けながらも、互いに協力し合い、平和な暮らしを守ろうとする日本人の気質は変わっていないと思います。しかし、このような調和的な社会で個人の感情を軽視される経験を積むうちに、現状を変えることを諦めたり、大切な人への思いやりを忘れてしまう人もいるようです。
平和で窮屈な日本社会で、どうしたら自由に生きられるかを、私はずっと考えてきました。人生に変革を起こすためには自己理解を深める必要があり、私は自身に関する気づきをできるだけ作品にして残しておきたかったのです。

「女性性」を多角的に捉える

私の作品の中でよく登場するモチーフは「女性」です。
日本に古来からあった美人画を子供の頃からよく見てきましたが、それは男性目線の理想像であったり、女性のナルシシズムのようにも見えました。しかし女性の中には、不安、憂鬱、激しさなど、負の要素もたくさんあります。女性のありのままを見つめ、もっと自由に、多角的に女性性を捉えて、女性が本来持っている力を引き出したいと思いました。
精神性や生命力を表すモチーフとして、太陽、宇宙、月、夜、炎などもよく登場します。現実社会のあらゆる文化や役割を超えた感情エネルギーを擬人化し、アイコニックな表現に落とし込むことで、鑑賞者の抑圧された温かい気持ちや、未知へ踏み込む勇気を呼び起こすことができれば幸いです。

人の手の「温かさ」を感じてほしい

今まで色鉛筆やアクリル絵の具を使ったアナログ技法とAdobe Photoshopによるデジタルテクニックの混合でデジタルアート作品を制作していましたが、近年はアクリル絵の具を使った肉筆の絵画、粘土を使った立体作品に移行しつつあります。デジタル化が進む現代で失われがちな人の手の温かさや情緒性を作品の手触りとして感じてもらいたいのです。
アクリル絵の具は乾きが早く、重厚な表現も軽快な表現も比較的自由に作ることができます。立体制作の主な材料であるオーブン粘土は、家庭用のオーブンを使って焼成することが可能であり、アクリル絵の具で着彩する際の発色も美しく仕上がります。

かけがえのない「今、此処」を表現し続けることによって、日常の雲間から新しい未来の光を見つけることができればと思っています。

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